東京大学の就活生がとる行動は未来の新卒採用を先取りしているよ
東大生が就職先を選ぶ理由のデータに、採用担当者が見逃せない変化が起きています。産経新聞社とワークス・ジャパンは、東京大学の就活生25卒・26卒・27卒の3年間を追跡調査しました。その結果が、採用市場の「近い将来」を静かに告げています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000135.000046760.html
最も目を惹くのは志望理由の激変です。25卒では5.2%に過ぎなかった「業績が安定しているから」が、26卒で10.1%、27卒では18.6%まで跳ね上がりました。わずか3年で約3.6倍です。反対に、25卒・26卒でトップだった「やりたい仕事ができそうだから」は、26卒の28.3%から27卒では10.5%へと急落しています。
東大生は景気と雇用の変化を、一般の就活生よりも早く感知する傾向があります。歴史的に見ても、東大生の就職志向の変化は、数年後の就活生全体の変化を先取りしてきました。つまり今の東大生の行動は、5年後に採用担当者が直面する光景の予告編です。
「安定志向」と聞くと、大企業しか勝ち目がないと感じる経営者もいるかもしれません。しかし同調査は、その見方を修正するデータも示しています。27卒の東大生のうち45.3%が「業界を絞らず様々な企業を見てみる」と回答しました。25卒では24.7%でしたから、3年で約2倍に増えた計算です。「最初から1社に絞り込む」学生は急速に減っています。業界を知らない学生がふらっと立ち寄る時代に、採用市場は移行しつつあります。
加えてこの変化は、「特定の人気企業しか採れない」という思い込みを崩す可能性を秘めています。27卒の東大生人気企業ランキングでは、三菱商事が77ポイントで3年連続1位を維持する一方、27卒では製薬・不動産・重工業が上位に複数ランクインしました。25卒・26卒でTOP5に食い込んでいたアクセンチュアとゴールドマン・サックスは27卒でTOP10圏外に後退しています。コンサルや外資系への集中が緩み、社会インフラに近い業種へと関心が広がっているのです。
この変化が採用担当者に伝えているのは1つのことです。「業績の安定性」「社会への貢献」「将来性」を、自社の言葉で具体的に語れる企業が、これからの新卒採用市場で声がかかる確率を高めます。商社でなくても、外資系でなくても、関係ありません。
2000年前後の就職氷河期に戻ってみましょう。多くの企業が新卒採用を止めました。10年後、30代の中堅社員が根こそぎ抜け落ちていました。業務の引き継ぎが滞り、現場のノウハウが失われました。焦った企業は、通常の採用コストの2倍以上を支払い、即戦力の中途採用に走りました。AIを理由に新卒採用を絞ることは、同じ轍を踏む未来への一本道です。5〜10年後に同じ代償を払うことは、歴史が証明しています。
2026年の今、状況は好転しています。AI普及で大手企業が採用枠を絞り始めた結果、昨年まで応募が全くなかった中小企業に、今年の4月時点で問い合わせや応募が届くようになった事例が相次いでいます。合同企業説明会でも動員増のケースが出始めています。就活生が動いているのに、採用側が昨年の感覚のままでいるとしたら、目の前のチャンスを見逃します。
では具体的に何を変えればよいのか。3点に整理します。
1点目は、「安定」の中身を数字で語ることです。「創業○年の老舗です」や「業界大手です」では伝わりません。自己資本比率・連続増益年数・主要顧客との取引継続年数など、財務の健全性を裏付ける数字を採用ページに明示してください。さらに「この会社が社会のどんな課題を解決しているか」を、業界の専門用語を一切使わず学生にも伝わる言葉で書き直すことが重要です。東大生が重視した「社会的貢献度が高いと思えるから」(27卒7.0%)や「将来性があるから」(27卒11.6%)も、同じ方向を向いています。
2点目は、業界を知らない学生を入り口にした情報設計です。「この業界は社会のどんな問題を解決しているか」を冒頭に書き、「他の業界との違い」を平易に示し、「入社後の具体的な仕事のイメージ」を社員の声と合わせて提示する。この順序を意識するだけで、採用コンテンツの伝わる範囲が広がります。
3点目は、内定後のフォロー設計を見直すことです。「第1志望の内定をもらう」を意識する東大生は25卒の54.6%から27卒の15.1%へと激減しました。幅広く比較してから慎重に決めるスタイルが主流になりつつある今、内定を出した後こそが勝負どころです。社員との面談機会・懇親会・入社前の業務体験など、入社後のイメージを具体化する接触を月1回以上設ける企業ほど、辞退率が下がる傾向があります。
ここで1つ、今日からできる行動を挙げます。自社の採用ページを開いて、「業績の安定性」「社会への貢献」「将来性」の3点を数字と平易な言葉で説明した箇所が存在するかどうか確認してみてください。もし書いていないなら、既存社員に「なぜこの会社は安定していると思うか」を3分間で話してもらい、その言葉をそのままページに載せることから始められます。プロの文章より、当事者のリアルな言葉が学生には刺さります。
東大生の志向変化は、今すぐ採用ターゲットを東大生に変えろという意味ではありません。採用市場のアンテナとして東大生のデータを読むことで、数年後に全学生が同じ方向を向いたとき、自社が既に対応済みの状態を作れます。今動いた企業が、5年後の採用市場で優位に立ちます。これも歴史が証明しています。
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