採用予算ほぼゼロで学生とつながるもうひとつの方法

7月4日付けの読売新聞1面より。
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20260703-GYT1T00339/

政府は企業と組んで大学に「契約学科」を5つ作るそうです。企業がお金を出し、大学と一緒に学科を設計する新しい仕組みです。卒業後は、その企業で活躍する道も想定されています。「大企業だけの話でしょう」と感じた方こそ、少し読み進めてください。中小企業にも、そっくり使える発想が隠れています。

まず、話題の中身を数字で押さえましょう。国が選んだのは、東大や神戸大など5大学。2028年度にも大学院へ新しい課程が生まれます。公募には24大学が手を挙げ、5校が選ばれました。東大はソニーと先端技術、神戸大は川崎重工とロボット技術に取り組みます。研究拠点を新たに作る場合、国の補助は最大25億円。背景には、深刻な人材不足があります。理系の技術者は、2040年に339万人足りなくなる見通しです。

ここまでは、大企業の世界の話に見えるかもしれません。ところが、同じ考え方は小さな会社でも動かせます。学科の新設は難しくても、授業を1コマ受け持つ道なら、十分に現実的です。実は、講師を探している大学は想像以上に多く見られます。応募が殺到すると困るため、表立っては募集しません。学科の事務室や主任の先生に直接たずねると、「実は探していたんだ」と返ってくる場面も多いようです。

証拠となる会社があります。福井県あわら市の福井鋲螺です。自動車部品のリベットを作る中堅メーカーが、5月に早稲田大学の教壇へ立ちました。環境省と組み、脱炭素の実例を語る特別講義です。環境省も評価した内容は、日本経済新聞にも取り上げられました。地元の福井大学でも講義を続け、ゼミと組んだ勉強会も開いています。

数字で見ると、効き目がはっきりします。会社説明会で向き合える学生は、1回あたり30人ほどです。90分の授業なら、1学期で300人と関われます。毎回レポートを書いてもらえば、光る学生が自然に浮かび上がるはずです。顔と名前と強みが、頭へすっと入ります。そのうえで、こちらから「ぜひうちへ」と誘える間柄。

費用の差も、見逃せません。求人広告に50万円を投じても、集まるのは10人ほど。しかも志望度の低い応募が目立ちます。一方、授業を通じた出会いなら、追加の持ち出しはほぼ0円。学生との距離の近さは、段違いです。浮いた予算は、入社後の育成へ回せます。この差は、そのまま会社の帳簿へ表れる数字。

視野を5年、10年先へ広げてみましょう。若い世代の都市への流出は、年々勢いを増しています。理系人材の奪い合いは、今後さらに激しくなる見通しです。そのなかで、地元大学と太いつながりを持つ会社は、毎年決まって新しい学生と出会えます。1度きずいた縁は、翌年も、その先も生き続ける財産。反対に、広告頼みを続ける会社は、費用だけがふくらんでいきます。動くか、とどまるか。分かれ道は、もう目の前に来ています。

うれしいのは、出だしにお金がいらない点です。地元にある大学の学科事務室へ、電話を1本。「実務の話を授業でお伝えできますが、ご要望はありますか」とたずねるだけです。今日、受話器を取れば、もう動き出しています。話が前へ進めば、教壇に立つ日も遠くありません。

現場の生々しい話は、大企業よりも中小企業の口から出てこそ、学生の心に響きます。大きな会社にはまねできない強みです。1本の電話が、27卒の採用を大きく変えるかもしれません。さあ、次に手ごたえを語るのは、あなたの会社の番です。


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