求人広告費を増やす前に多くの企業が見落としている無料の資産

毎年この時期になると、採用担当者から「求人広告にお金をかけているのに応募が来ない」という声を聞きます。でも、就活生が実際にどこを見て応募先を決めているかを知ると、問題の場所が広告費ではないことに気づきます。

ネオキャリアが2027年卒の就活経験者を対象に行った調査があります。「最も信頼できる情報源はどこか」という問いへの答えで、1位になったのは「企業の公式採用ページ」で33.9%でした。SNSでも、口コミサイトでもありません。就活生が最後に信頼を置く場所は、企業が自分たちで作った採用ページなのです。

これを聞いて、自社の採用ページを最後に更新したのはいつかを思い出してみてください。「会社概要」「事業内容」「募集要項」が並んでいるだけのページは、就活生の目には「どの会社も同じ」に映ります。読んでも自分がそこで働く姿を想像できないページは、33.9%の信頼を受け取るだけの器になっていません。

では、就活生が採用ページに何を求めているかを具体的に考えてみます。「入社3年目の先輩は今、何の仕事を担当しているか」「月曜の朝、オフィスに着いたらまず何をするか」「この会社に入って最初の1年間で、どんな失敗をして、何を学んだか」。こうした場面が言葉で描かれているページは、読んだ学生の体験が変わります。「会社のことがわかった」から「ここで働く自分が見えた」へと変わるのです。その変化が、エントリーボタンを押す動機になります。

採用ページの見直しは、今日すぐに始められます。まず採用ページを就活生のつもりで1度読み直してみてください。「弊社は〇〇な会社です」という説明文が並んでいる箇所を1か所見つけ、そこを「入社2年目の社員が先週担当した仕事の話」に書き替えるだけで、ページの印象は別物になります。費用も外注も必要ありません。

採用ページと並んで見逃せないのが、SNSの役割です。同じ調査で「SNSをきっかけに企業説明会やインターンシップに参加した」が30.3%、「SNSで初めて知った企業に実際にエントリーした」が27.5%という結果が出ています。SNSは採用ページへの入口として、すでに十分に機能しています。

SNSで最初に着手すべきはYouTubeです。理由は明快で、動画を採用ページに直接埋め込めます。就活生が採用ページを開いた瞬間に職場の空気を映像で伝えられるため、ページとSNSが相互に作用します。スマートフォン1台で撮った社員インタビュー動画でも、文字だけのページとは比べものにならない情報量を届けられます。

次に効果的なのはInstagramです。実際に体を動かす職種、たとえば製造・建設・医療・介護・飲食といった現場では、文章での説明より1枚の写真の方が伝わる情報が多い場面があります。「現場ってこういう雰囲気なんだ」という理解が得られると、応募のハードルが下がります。XはInstagramより拡散力がありますが、採用への直接的な接続という観点では、視覚情報で職場を見せられるInstagramとYouTubeの方が効果的です。

ただし、SNS活用には気をつけるべき点があります。同調査では、SNSの情報を信じて行動した結果「後悔した経験がある」と答えた就活生が55.0%にのぼっています。後悔の内容で最も多かったのは「不安を煽る投稿を見て焦って行動してしまった」で50.0%、次いで「誤った情報を鵜呑みにしてしまった」が35.0%でした。就活生はSNSを日常的に使いながらも、その情報の不確かさを体感で知っています。だからこそ、最終的に「企業の公式採用ページ」に33.9%の信頼が集まるのです。

この構造を企業側の戦略として整理すると、2段階の設計になります。SNSで存在を知ってもらい、採用ページで信頼を獲得する。SNSが入口で、採用ページが決め手です。どちらか一方を強化しても、もう一方が弱ければ就活生は途中で離れます。求人広告費を増やす前に、この2か所の質を上げる方が先です。

では、現状維持のままでいるとどうなるかを考えます。採用ページが薄いまま求人広告費だけを積み上げると、多くの学生がページを開いて離脱します。1人あたりの採用コストは上がり続け、採用した学生とのミスマッチも解消されません。新卒社員が3年以内に辞めると、また同じ費用をかけて採用が始まります。採用に消えるお金が年々増える一方、採用ページという「無料の営業資産」は活用されないまま残ります。

逆に、採用ページの質を上げた会社では変化が起きています。国内の中小企業でも、採用ページに社員の日常を具体的に掲載した後、応募者のエントリーシートの記述が変わったという声があります。「御社の採用ページにあった〇〇の話を読んで」という書き出しが増えた、つまり会社を深く調べた上で応募してくる学生が増えたのです。そういう学生は入社後の定着率が高く、採用コストの回収が早くなります。

最も信頼される情報源が「企業の公式採用ページ」である以上、そこへの投資が採用の中で最も費用対効果が高い打ち手です。今日、採用ページを就活生の目線で読み直す30分が、来年の採用結果を変える最初の一歩になります。


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