AIで書類を作る就活生、企業側の対応策と面接の進め方
2027年春卒業予定の大学生を対象にした調査で、就職活動に生成AIを「利用していない」と答えた学生は、わずか3%にとどまりました。3年前の2025年春卒では55%が「使っていない」と答えていましたが、26年春卒で24%に半減し、27年春卒でついに3%まで急落しています。つまり採用活動をする企業の担当者は今この瞬間、AIの使用による就活生のエントリーシートの均質化が進んでいる現場に立っているわけです。書類を読んでいると、どれも整った文章が並んでいて、「この子はどんな人なんだろう」という問いへの答えが、どこにも見当たらない。そう感じ始めていたとしたら、その感覚は正しいものです。
就活生はAIをどう使っているのでしょうか。活用場面を複数回答でたずねた調査によると、最も多い回答は「エントリーシートの添削・改善」で6割を超え、次いで「自己分析」が約5割、以下「企業研究」「業界研究」「エントリーシートの作成」と続きました。具体的な使い方では「自分で作成したものをベースにブラッシュアップに活用した」が43%と最多を占め、「AIがたたき台を作り、自分の経験に合わせて修正した」が20%、「AIが作ったものの一部を修正」が18%、さらに「AIが作ったものをそのまま使用」した学生も3%いました。完全にAIに丸投げした割合こそ少数ですが、何らかの形でAIが関与したエントリーシートが大多数を占める時代に、もう入っているのです。
かつての書類選考は機能していました。エントリーシートを読めば、その学生がどんな経験をして、何を考え、なぜ自社に来たいのかが伝わってきました。選考担当者がひとりひとりの書類に向き合い、「この人なら」と判断できる材料がそこにありました。ところが今、どれほど時間をかけて書類を読んでも、見えてくるのは整った文章と構成であって、その人自身ではありません。書類選考にかけた時間とエネルギーが、以前ほど採用の精度に結びつかなくなっています。それは選考担当者の力量の問題ではなく、書類という土台そのものが変わってしまった結果です。
同じ課題に直面した企業が、すでに動いています。大阪市に本社を置くロート製薬は、2027年4月入社の新卒採用でエントリーシートによる書類選考を廃止し、一次ステップを人事担当者との15分対話に置き換える「Entry Meet採用」を導入しました。背景にあるのは、生成AIの普及による書類の均質化です。ロート製薬の理念に不自然なほど共感しているエントリーシートや、明らかに高評価を狙っていると見られる均質的なエントリーシートが年々増加していたと、担当者は語っています。同社の入社3年後の新卒定着率は2021年入社が96%、2022年入社が93%と高水準を維持しており、対話を起点にした選考が定着率の向上につながる可能性を示しています。
もちろん、すべての企業がロート製薬のように書類選考を廃止できるわけではありません。人事担当者の数も、選考にかけられる時間も、会社によって事情は異なります。それでも、今すぐ取り入れられる打ち手はあります。書類選考の構造には手を加えず、面接の質問の仕方だけを変えるのです。追加の費用はゼロ、準備に必要な時間は数分で済みます。
具体的には、面接でエントリーシートの記載内容について4つの質問を順番に投げかけます。「そのとき何を感じましたか」「次にどう動きましたか」「その結果、どうなりましたか」「今その経験を弊社でどう活かせますか」という4問です。この問いの連鎖に意味があります。AIが生成した文章は論理的で読みやすいのですが、それは「整理された情報」であって「体験の記憶」ではありません。「そのとき何を感じましたか」と問われた瞬間、書類の内容を丸暗記していた学生は言葉に詰まります。感情は覚えられても、AIが作った感情を体験として語ることはできないからです。5人に1人の学生が、面接で深く追及されたときに半分以上の質問に答えられなかったという調査結果もあります。それは選考担当者が見極める絶好の場面でもあります。
この4問が機能する理由は、答えに「正解」がないからです。「何を感じたか」は人によって違う。「どう動いたか」はその人の行動パターンを映し出す。「結果どうなったか」は実際に行動した人だけが知っている事実です。そして「弊社でどう活かせるか」は、その学生が貴社の仕事を本当に理解しているかどうかを試します。自己PRや志望動機の暗記では答えられない問いが、次々に出てくるのです。返ってきた回答が貴社が求める人材像と合致しているかどうかも、この流れの中でくっきりと見えてきます。
この取り組みが貴社にとって何を意味するか、具体的な数字で考えてみてください。新卒採用で入社した社員が3年以内に辞めた場合、再採用にかかるコストは概算で1人あたり50万円から100万円以上と言われています。採用担当者の工数、求人広告費、面接に費やした時間、入社後の研修費用、それらが全て再びかかります。さらに、空席期間中の現場負担や残った社員のモチベーション低下も加わります。面接票に4問を加えるだけで、この連鎖を断ち切れる可能性があるとしたら、試さない理由はありません。
面接の進め方を変えた会社が得るもうひとつの副産物があります。学生側からの評価です。自分の言葉で話せる場を設けてくれる会社は、学生に「この会社は本気で自分を見てくれている」という印象を与えます。同時に複数の会社の選考を受けている学生が、どの会社を選ぶか最終的に迷ったとき、対話の質が決め手になるケースは少なくありません。面接の質を上げることは、優秀な学生に選ばれる会社になることでもあります。
次の面接から、面接票の最後に4つの問いを書き加えてみてください。「そのとき何を感じましたか」「次にどう動きましたか」「その結果、どうなりましたか」「今その経験を弊社でどう活かせますか」。この順番で聞くことが大切です。最初の3問は過去の経験の深さを掘り起こし、最後の1問は貴社への理解と意欲を同時に確かめます。練習は必要ですが、追加の費用は一切かかりません。書類選考の仕組みはそのままで構いません。面接の問いを4問変えるだけで、1年後の新入社員の定着率と、5年後に現場を支える人材の顔ぶれに、大きな違いが生まれてきます。
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