Z世代が貴社に応募しない理由は給料ではなく「不安」でした
採用がうまくいかない。求人を出しても応募が来ない。せっかく来ても内定を出すと辞退される。入社しても1年以内に辞めてしまう。そんな悩みを抱えている企業の担当者に、今日は大きな気づきをお届けします。鍵は、貴社への応募を妨げているZ世代の不安の正体を知り、それを自社の力で消してしまうことです。
まず、今の就活生の心理を押さえておきましょう。電通が2025年卒・26年卒の就活生を対象に実施した調査によると、内定辞退の理由として「勤務地や転勤の可能性に不安」が上位に並んでいます。さらに、勤務地の確約を望む学生が88.8%、職種・配属先の確約を望む学生が85.3%にのぼり、待遇と安定を強く求める傾向が明確に出ています。親の世代がリーマンショックや就職氷河期で苦しむ姿を見て育ったZ世代は、「業界・企業の安定性が高い」をキャリア選択の最重要事項として挙げる学生が62.2%と、直前の調査から18.8ポイントも増加しています。この数字が示すのは、Z世代が「不安の解消」を最優先にしているという事実です。
しかし同時に、もう1つの重要な不安があります。「入社したあとに成長できるのか」「この職場に自分の居場所はあるのか」という不安です。Z世代は仕事に対して「意味」や「納得感」を求める傾向が強く、単なる給与や福利厚生だけではモチベーションを維持しづらいとされています。賃金だけで勝負しようとすると大手企業に負けます。しかし「入ったあとの成長と居場所」は、大手よりも中小企業のほうが圧倒的に強い武器になります。距離の近い職場環境、若手から仕事を任せるスピード、経営者と直接話せる機会。これらはすべて、不安を消してあげるための材料になります。
具体的なシーンで考えてみましょう。日本経済新聞首都圏版に先日取り上げられた2社の実例が、この考え方をよく表しています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC180KY0Y6A810C2000000/
1社目は、神奈川県相模原市で建設機械部品を製造する丸栄工業です。かつてはメイン取引先の米キャタピラーへの依存度が売上の9割に達しており、2018年に相模原事業所が閉鎖されたことで経営の危機に直面しました。しかしここから同社は、社員全員で知識を共有する仕組みづくりと、階級別の研修制度の整備に大きく舵を切ります。社会人としての基礎から最新のデジタル化対応、製造技術まで、段階ごとに学べる環境を整えました。さらに会社の5カ年計画を、経営者だけが決めるのではなく、社員との対話を重ねながら毎年策定・更新する形に変えました。結果として従業員数はおよそ10年で2倍の約60人まで増え、離職率も大幅に低下しています。取引先は現在30社程度にまで増え、キャタピラー依存度は3割程度まで下がりました。この取り組みは中小企業庁が選定する「はばたく中小企業・小規模事業者300社」の「人への投資・環境整備」部門にも選ばれています。
就活生が丸栄工業に感じる不安の正体は何だったでしょうか。「自分は成長できるのか」「学びの機会があるのか」「配属されたらほったらかしにされるのではないか」です。同社はその不安を、見える形の研修制度と対話型の計画策定で消してみせました。入社後の成長のルートが具体的に見えるため、面接や説明会で迷いが生じにくくなります。応募から入社、そして定着までが一本の線でつながっているのです。
2社目は、東京・目黒で銀ロウ付けを専門とする佐藤製作所です。14年前に3代目として佐藤修哉常務が入社した当時、同社は10期連続の赤字。平均年齢が60歳程度の男性ばかりで、会社の存続すら危ぶまれる状況でした。中途採用で若返りを図ろうとしたものの、経験者はすぐに辞めてしまう。そこで同社が思い切って選んだのが、新卒採用への転換と、業界でも特殊な「銀ロウ付け」という技術の前面への打ち出しでした。「この技術を身につけたい」という学生に絞った募集を続けた結果、新卒の女性社員が入社し始めました。
女性が町工場への就職を躊躇する最大の不安は何でしょうか。重い物を持ったり運んだりしなければならないのではないか、という身体的な不安です。ところが銀ロウ付けで使う道具は重くありません。佐藤製作所はその事実を伝えるために、職場体験会を継続的に開催しました。実際に道具を持ってもらい、作業を体験してもらう。たったそれだけです。費用をかけた大がかりな広告ではありません。しかし体験を通じて不安が消えた参加者は、「ここなら自分も働ける」と実感できます。その結果、現在は社員の半数が30代以下となり、女性が社員の半数を占めるまでになりました。愚痴の絶えなかった職場は、積極的なコミュニケーションが生まれる場へと変わっています。2016年には黒字に転換し、取引先は400社まで増え、売上単価も数千円から数万円に上昇しています。
この2社に共通しているのは、求職者が持つ「具体的な不安」を正確に把握し、それを言葉ではなく「体験」や「仕組み」で消してみせた点です。「うちは教育体制がしっかりしています」という言葉は、誰でも言えます。「入社後にどんな研修が、どの段階で受けられるのか」を具体的に見せることと、「まずは職場を見に来てください」と誘い体験させることは、全く別の効果を生みます。採用コンテンツのトレンドとして最も顕著な変化は、会社の紹介よりも働く人の個人視点が重要になっているという点で、大企業の約7割がパーパスやミッションの発信を強化していても早期離職は減少せず、むしろ1年以内の離職は増加傾向にあります。いくら会社の理念を美しく語っても、「実際に働く自分のイメージ」が持てなければ応募には至らないし、入社後にもギャップが生まれます。
ではどんな不安が求職者の頭に浮かぶのかを、整理してみましょう。製造・現場系であれば「体力的にきついのではないか」「危険なのではないか」「汚れや臭いがきついのではないか」という不安があります。中小企業全般には「倒産しないか」「教育してもらえるのか」「昇給の見込みがあるのか」という不安があります。女性社員が少ない職場であれば「なじめるのか」「産休・育休が取れるのか」という不安が加わります。これらの不安を洗い出し、1つずつ消していくための「見える化」と「体験の機会」が、採用と定着を同時に改善する最短経路です。
現状維持のまま何もしなかった場合、何が起こるでしょうか。製造業において34歳以下の就業者数の割合は、2002年と比較して6.9%減少しており、若手人材の獲得競争は激化しています。若手の絶対数は今後も減り続けます。広告費をかければ解決する時代はすでに終わっています。Z世代はデジタルネイティブでありながら安定と成長の両立を求める傾向が強く、企業の「言葉」よりも「行動」を見ています。採用サイトに書いてある言葉より、実際の職場や先輩社員の姿から判断する学生が増えています。言葉だけ磨いても届きません。
逆に、自社の不安解消を仕組みとして整えた企業には、好循環が生まれます。採用できた人材の定着率が上がれば、育成コストが蓄積されます。育った若手が現場を動かし始め、生産性が上がります。そして「あの会社は入ると成長できる」という評判が口コミで広まり、次の採用がさらに楽になります。採用広告費を年々増やさなくても人が集まってくる状態になれば、その分を設備投資や賃金に回せます。貸借対照表の上では見えにくい変化ですが、人材が定着し育つことは長期的に見ると最も確実な競争力の源泉です。
最初の一歩として、今日できる取り組みがあります。自社の社員に「うちの会社に入る前、どんな不安があったか」を聞いてみてください。費用は一切かかりません。その答えを書き出すと、自社が解消すべき不安の一覧が完成します。次に、その不安のうち1つを選び、実際に体験してもらえる場を設けることを検討してください。見学会でも、半日体験でも、工場見学でも構いません。佐藤製作所のように「来て触ってみてください」とお誘いする場が、言葉で100回説明するより確かな安心感を届けます。
Z世代は弱い世代でも扱いにくい世代でもありません。不安を解消してもらえる職場を真剣に探している、ひたむきな世代です。その不安に丁寧に応えた企業だけが、採用と定着の両方で結果を出しています。貴社が持っているその「働きやすさ」や「成長できる環境」を、見えるように整えることが、今すぐ始められる最も力強い採用戦略です。
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