卒業生の4分の1が日本企業に就職!モンゴル高専生が採用担当者に選ばれる理由
新卒採用難の打開策として、今まで思いもしなかった方向に目を向け始めた地域機関が現れています。千葉商工会議所がモンゴルにある3校の高等専門学校の学生を対象に、合同企業説明会と現地での面接会を開催すると発表しました。日本経済新聞千葉版で報じられたこの動きは、採用難に悩む多くの中小企業にとって見逃せない情報です。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC043JL0U6A800C2000000/
まず「モンゴルの高等専門学校」を知らない方に説明しておきましょう。モンゴルには2014年以降、日本の高専をモデルにした「モンゴル高専」がウランバートルに設立されました。JICAの支援を受けながら開校し、現在は約1300人がこの日本式の教育を受けています。カリキュラムは機械工学・電気電子工学・情報工学など技術系の専門分野が中心で、日本語が必修科目であることから日本に関心を持つ学生が多く、卒業生の4分の1が日本の企業に就職しています。
なぜ日本語が必修なのかというと、設立の背景にモンゴル側の「日本式技術者教育をモンゴルの発展に活かしたい」という意志があったためです。採用実績を持つ勝亦電機製作所の勝亦章浩社長は「モンゴルの高専生は『国を豊かにしたい』という高い志を持っている」と評価しています。日本人学生が企業の知名度や規模だけで応募先を選ぶ傾向が強まる中、仕事への真剣な意欲を持つ技術系人材が海外にいる。この現実を知っているかどうかで、採用の選択肢は大きく広がります。
千葉商工会議所はこの取り組みを今回が初めて始めるわけではありません。コロナ禍以前からモンゴル人材との仲介に取り組んでおり、すでに電気設備工事会社や建設会社など少なくとも4社に計6人が就職した実績があります。今回はさらに一歩進め、10月にオンラインで合同説明会を実施したうえで、11月には首都ウランバートルに出向いて現地で直接面接する形式に変えました。オンラインだけでは把握しにくい学生の人柄や志望動機を、対面で確かめられる利点があると判断したためです。
先行して実績を積み上げているのが東京・品川区です。品川区は技術者不足に悩む区内企業の人材確保や技術者育成を支援するため、2017年からモンゴル高専と連携した人材交流事業をスタートさせています。2024年度は学生17人が来日し、製造業6社・情報通信業3社でインターンシップを経験しました。
2024年5月にはモンゴル教育・科学省およびJICAとの覚書も締結し、区内企業への就職者がすでに延べ20人を超えるという成果が出ています。自治体と地域企業が連携してモンゴル人材とのマッチングを続けた結果が、この数字です。
また、千葉だけではなく全国で似た動きが広がっています。熊本商工会議所は「CROSS OVER」という取り組みを通じて台湾の大学と連携し、合同就職説明会やインターンシップを実施しています。台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出を機に台湾人材のニーズが高まっており、台湾の3大学から24人を受け入れたインターンシップも実施しました。さらに茨城県の関彰商事は、ベトナムのハノイ工科大学で2016年から合同企業説明会・面接会を毎年開催し、これまでに来場学生数が延べ8,989人、出展企業数が168社にのぼるまでに拡大しています。さらにインドにも展開し、アミティ大学・ネルー大学・デリー大学・インド工科大学デリー校の学生を対象に現地での面接会を実施しました。
こうした動きが広がっている背景には、日本の就職市場の構造的な問題があります。日本の学生は企業の知名度や世間的な認知度で応募先を絞り込む傾向が強く、中小企業は大手と同じ舞台で戦っても埋没してしまいます。一方、海外の多くの国では新卒の就職難が深刻な社会問題になっています。日本で働くことへの関心は高く、日本語を学び、技術を身につけた学生たちが「自分を必要としてくれる職場」を真剣に探しています。需要と供給が噛み合う場所が、海外に存在するのです。
国立高等専門学校機構の担当者は「求人を出す中小企業の皆さんは『日本の高専生は人気が高いので大手企業に流れてしまう。コミュニケーションに問題がないのであれば、モンゴルの高専生を紹介してほしい』と話しています。日本では高専生1人につき20社程度から声がかかるほど人気が高いのです」と語っています。モンゴルの高専生は日本式カリキュラムで5年間学んでおり、実践的な技術者としての能力は確かです。加えて入学倍率が約3.5倍という超難関校もあり、在籍するのは選ばれた学生たちです。
では、貴社がまずできることは何でしょうか。千葉商工会議所・熊本商工会議所のような自治体・商工会議所主導の合同説明会や現地面接ツアーに参加することが、最も手軽に始められる入口です。個社で海外に出向いて採用活動をするには相当の費用と準備が必要ですが、こうした団体が組む枠組みに乗ることで、個社では動きにくいルートへのアクセスが開けます。お近くの商工会議所や産業振興センターに「海外人材のマッチング事業はありますか」と問い合わせてみてください。費用がかからない問い合わせから、採用の新しい扉が開くかもしれません。
貴社が現状維持のまま動かなければどうなるでしょうか。日本の生産年齢人口は減り続けており、製造業や技術系職種での人手不足は今後さらに悪化する見通しです。国内の採用市場で大手や知名度の高い企業と競い続けるほど、採用コストは上がり、採れる人材の数は減ります。一方で早くからこうした海外ルートに動いた企業は、継続的な人材確保のパイプを作り上げ、採用安定という大きな経営上の強みを手に入れます。採用の安定は、離職による欠員補充コストの削減にもつながります。中長期の収支で見れば、今動くことの価値は十分にあります。
JICAの担当者は「モンゴル高専の取り組みの成果と意義は、モンゴル国内にとどまらず、人材不足に悩む日本の地方経済活性化の一助ともなっています」と述べています。千葉商工会議所の今回の動きは、その流れをさらに加速させる1つの出来事です。採用の戦い方を変えた組織や企業から、この流れに乗っています。貴社がそこに加わる準備は、今日から始められます。
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