北海道の会社が実践する外注費ゼロで内定辞退を防いでいる方法
内定を出したその瞬間、多くの会社は安堵します。でも、本当の勝負はそこから始まっています。
マイナビの調査によると、2026年卒の学生は7月時点で、入社予定先に対して3人に1人が「不安が解消されていない」と答えています。内定を持ちながら就職活動を続ける学生も珍しくなく、内定辞退が増えたと答えた企業は3社に1社に上ります。これは一部の大企業の話ではありません。新卒採用の1人あたりのコストが93万円前後とも言われる中で、せっかく時間と費用をかけて内定を出した学生が10月の入社式を待たずに辞退する現実は、中小企業にとってそのまま採用費の丸損を意味します。再び求人を出し、面接を繰り返す。その苦労が翌年にも待っている。このループを断ち切る方法が、北海道の建設会社の取り組みの中にあります。
その会社は、入社を決めてくれる学生の割合を毎年90%超に保っています。特別な費用はかけていません。大がかりなイベントも、外部の会社への委託もありません。決め手は、入社の返事をもらう前から動き始める姿勢と、若手社員の飾らない言葉でした。
多くの会社が内定式の10月1日を起点に動きます。そのタイミングで懇親会を開き、社内見学を案内し、先輩との交流の場を用意する。やっていること自体は間違いではありません。ただ、それでは遅いのです。マイナビの別の調査では、内定辞退を申し出る時期は「8月」が約47%、「9月」が約27%でした。つまり、多くの学生は内定式が来る前に気持ちを固めています。10月に動き始めた会社は、すでに学生の心が他社へ向いた後に間に合おうとしている状態です。
北海道の建設会社が違った点は、内定を出した直後から若手社員が動き始めることでした。入社1、2年目の社員が、年齢の近い立場でこまめに連絡を入れます。就職活動の状況を聞き、迷いがあれば1つずつ話を聞く。そこで語られるのは、会社のパンフレットには載っていない言葉です。「最初は私も不安だったけど、こういう理由でここに決めた」「正直に言うと入社前はこんなことが心配だった」。飾りのない先輩の一言だからこそ、学生も本音を打ち明けられます。人事担当者への言いづらい本音が、同じ世代の先輩には自然と出てくるのです。
ダイヤモンド社が入社3年目までのビジネスパーソン1,119人を対象に実施した調査では、500名以下の会社でも50.0%が学生と1対1で面談を実施し、学生側も30.6%が個別の相談を望んでいました。また、75.7%の学生が内定者フォローに対面での交流を希望しています。大きな会を開かなくても、1人1人と向き合う機会を作るだけで、学生の安心感は変わります。
では今日から何ができるでしょうか。まず、内定を出した学生1人1人に短いメッセージを送ってみてください。内容はシンプルで構いません。「今いちばん気になっている点を、1つだけ教えてください」それだけでいい。準備も予算も、外部への依頼も要りません。返ってきた迷いに、若手社員が自分の経験を交えて答えます。「私も同じことが心配でした」「うちの場合はこうだったので安心しましたよ」という一言が、学生の心に刺さります。
この動きにかかるコストは、社員が電話やメッセージに費やす時間だけです。1人30分の対話が、100万円近い採用コストを守る防衛線になります。内定者が1人辞退するたびに、その採用に使った時間と費用が全額消えます。翌年また同じ求人を出すための広告費も加算されます。一方、丁寧に寄り添われた学生は迷いなく入社を決め、入社後も早く職場になじんでいきます。3年以内の離職率が31.2%とも言われる中で、最初の不安をきちんと解消された学生が長く働いてくれる可能性は高まります。
内定を辞退されることの財務的な影響を数字で考えると、その重さが分かります。新卒採用1人あたりのコストが約94万円、求人を出し直す広告費が追加で数十万円、面接対応に費やした社員の稼働時間。これらが1人の辞退のたびに積み上がります。5人採用予定で2人に辞退されれば、200万円近い埋没コストが発生する計算になります。それを防ぐ手段が、若手社員のメッセージ1通から始まるとすれば、やらない理由はありません。
逆の視点でも考えてみましょう。今年これを実践した会社と、実践しなかった会社の間には何が起きるでしょうか。内定者の不安に寄り添い続けた会社には、春に予定通りの人数が入社します。入社後の定着率も上がり、採用の「やり直し」が減ります。採用に使うはずだった費用を、新入社員の育成や設備への投資に回せます。一方、10月まで沈黙し続けた会社は、内定式前後に辞退を知らされ、急いで追加の採用活動に乗り出します。その年の採用は計画を下回り、現場は少ない人数で回し続けます。この差が、数年後のバランスシートの差にもなっていきます。
すぐに動ける会社は、今日から動き始めてください。最初の一歩は、現在内定を持っている学生の名前を書き出し、若手社員の誰かと「この学生を担当する」と決めることです。担当が決まったら、今週中に1通、短いメッセージを送ります。内容に正解はありません。「最近、就活のほうはどうですか」その一言で十分です。学生は「見てもらえている」と感じ、御社への信頼を深めます。
内定を出した瞬間は、採用の終わりではなく始まりです。10月の入社式は、今から積み上げてきた対話の数だけ、揺るぎない結果になります。いる若手社員の言葉が、最も費用対効果の高い採用ツールです。最初の1通を、今日送ってみましょう。
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