面接した求職者が静かに辞退していく会社が見落としていること

面接を終えた求職者が、そのまま静かに選考を辞退していく。このような経験に、頭を悩ませたことはありませんか。実は、面接の場で起きているある「見落とし」が、この問題を引き起こしているケースが非常に多くあります。そして、その見落としに気づいて面接のやり方を変えた企業では、内定承諾率が劇的に改善しています。これから、その「見落とし」の正体と、今すぐ実践できる改善策をお伝えします。

まず、現在の採用市場がいかに厳しい状況にあるか、数字で確認しましょう。リクルート就職みらい研究所の調査によると、新卒採用における内定辞退率は2025年卒の12月1日時点で65.1%に達しています。3人に内定を出して、ようやく1人が入社してくれる計算です。また、マイナビの「2026年卒企業新卒内定状況調査」では、採用活動が厳しかった理由として「内定辞退の増加」を挙げた企業が31.6%にのぼりました。採用の入口で苦労している企業が、選考という後半の局面でさらに大きなロスを出している実態が、この数字からはっきりと見えてきます。

では、なぜこれほど多くの辞退が起きるのでしょうか。パーソルキャリアが運営するdoda人事ジャーナルが2025年6月に実施した調査(対象:20〜60代の転職経験者525名)の結果は、企業の採用担当者にとって非常に耳の痛い内容です。「面接を受けて志望度が下がった経験がある」と答えた人は、一般社員・係長クラスで49.6%、課長・部長・役員クラスでは58.2%にのぼりました。役職を問わず、約半数の求職者が面接を経験することで「この会社に入りたい」という気持ちを下げているのです。さらに、志望度が下がった理由の第1位は「面接官の態度・印象が悪い」(50.4%)でした。

この調査結果が示しているのは、面接という場が企業にとっての大きなリスクになっているという現実です。面接官の対応1つで、入社を前向きに考えていた求職者が気持ちを冷ましてしまう。そしてその求職者は理由を告げることなく「他の企業に決めました」と去っていきます。企業側からはその理由が見えないため、同じ失敗が何度でも繰り返されます。

ここで問い直したいのが「面接の目的は何か」です。多くの企業が「面接=選別の場」と捉えています。確かに選別は面接の重要な役割です。しかし、それだけでは今の採用市場では戦えません。採用コンサルタントとして250社以上の採用支援をしてきた私の現場感覚でも、そしてビジネスジャーナルの記事「『勘と経験』の面接が優秀な人材を逃す…妥当性係数0.51の科学的手法とは」でも、同じ指摘がされています。面接の場には「見極める」役割と「惹きつける」役割の2つが存在しており、現在の採用市場では後者が決定的に欠けている企業が多いのです。

なぜ「惹きつける」役割が不可欠なのか。答えはとても簡単。目の前にいる求職者は、貴社だけを受けているわけではないためです。複数の会社の選考を同時に進めながら、どの会社に入るかを比較検討しています。採用コンサルタントとして私が講演の場でいつも話しているのは「面接に来た方は、貴社が第一志望ではありません。いくつかの会社の選考を同時に受けていて、天秤にかけていますよ」という事実です。つまり、面接はただ合否を決める場であるだけでなく、「この会社に入りたい」という気持ちを高める場でもなければなりません。選別を行いながら、同時に志望順位を引き上げる。この2つを同時に達成できた企業だけが、内定承諾を勝ち取れます。

では、従来型の「選別しかしていない面接」から「選別と惹きつけを両立する面接」に変えると、現場でどんな変化が起きるのでしょうか。具体的なシーンで見ていきます。

まず、面接官が選別しか意識していないと、無意識のうちに「審査する側と審査される側」の上下関係が生まれます。「それはなぜですか」「それで何が学べましたか」と矢継ぎ早に質問し、相手の回答の粗を探す。面接官の表情は厳しく、言葉は事務的。これでは、求職者は「試されている」「威圧されている」と感じ、その緊張感の中で「この会社のカルチャーはこういうものなのかな」と判断してしまいます。doda人事ジャーナルの調査でも、面接官への不信感の原因として「面接官の横柄・威圧的、態度が悪い」が35.2%で最多でした。

一方、惹きつけを意識した面接官は、全く異なる動き方をします。面接の前半では、求職者が過去に実際に取った行動を丁寧に深掘りしながら、その人が歩んできた道のりを理解しようとします。「それは大変でしたね」「その状況でそう動けたのは、なぜですか?」と笑顔で興味を持って聞くことで、求職者は「自分の経験をきちんと受け取ってもらえている」と感じます。そして面接の後半では、求職者が転職や就職で抱えている悩みや希望を引き出したうえで「うちに来ればこういう経験ができます」「その課題なら、うちのこのポジションで必ず解決できます」と、求職者個人のニーズに寄り添った形で自社の魅力を伝えます。こうした面接を経験した求職者は「この面接官と一緒に働きたい」と感じ、貴社の志望順位が自然と上がっていきます。

この「惹きつける力」が採用結果に直結することは、実際の企業事例が証明しています。BPO事業を手がけるトランスコスモスでは、AI分析ツールを活用して面接官の話し方や質問の仕方を可視化し、個別フィードバックと研修を組み合わせたトレーニングプログラムを導入しました。その結果、内定承諾率が10%向上し、候補者へのアンケートで「この面接官と働きたい」と答えた人が42%増えたことが報告されています。

また、SHE株式会社では採用プロセス全体を候補者ファーストの視点で見直した結果、応募から内定までの日数が92日から26日に短縮し、内定承諾率が約68%から約96%へと大幅に上昇しました。数字が雄弁に物語っています。面接の質と雰囲気を変えるだけで、採用の成功率は劇的に変わります。

では、今日から実践できる具体的な動き方を解説します。

「面接の構成」を変えましょう。前半は求職者の過去の行動を丁寧に引き出します。「前職でどんな場面が一番やりがいでしたか?」「逆に、一番しんどかった経験は何ですか?」と聞き、求職者の本音を引き出します。ここで重要なのは、面接官がきちんとメモを取りながら真剣に聞く姿勢を見せることです。「自分の話をここまで真剣に聞いてもらえた」という体験そのものが、入社意欲を高めます。後半は、前半で聞いた転職理由や悩み・希望を受けて「実は、うちでもまったく同じ課題を解決したいと思っているんです」「その経験は、うちのこのポジションで間違いなく活かせます」と、その人個人に向けたメッセージを伝えます。画一的な会社説明ではなく、目の前の人に合わせたオーダーメイドの言葉を届けることで、求職者の心は大きく動きます。

そして最後に、内定を出したい求職者には「その場でのクロージングする!」を意識してください。「ぜひ一緒に働きたいと思っています」「あなたのこういう経験を、うちではこういう形で活かしてほしいと考えています」と、具体的な未来を伝えながら入社への気持ちを確認します。このひと言があるかないかで、内定承諾率は大きく変わります。

もし現状のまま何も変えなかったとしたらどうなるでしょうか。内定辞退率が65%を超える市場環境の中で、「選別しかしない面接」を続けることは、3人採用したくても1人しか入社しない状況を永遠に繰り返すことを意味します。採用にかかった時間・コスト・担当者の労力が毎回3分の2ほど無駄になり、その間にも採用できなかったポジションの業務は誰かに積み重なっていきます。さらに、面接で不快な思いをした求職者は口コミサイトやSNSに書き込み、それを見た次の求職者が応募をためらうという悪循環に陥ります。しかし逆に、面接の場で「選別」と「惹きつけ」の両方を意識できるようになった企業では、内定承諾率が上がるだけでなく、面接そのものが口コミで良い評判を呼び、応募数の増加にもつながっていきます。採用は、正しいやり方さえ知れば必ず良くなります。

今日から変えられます。面接官に「目の前の求職者の志望順位を上げることも、あなたの大事な役目です」と伝えるところから始めてください。選別の目線と、惹きつける言葉の両方を持った面接官が1人でも増えれば、貴社の採用は確実に変わりますよ!


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