「風通しの良い職場」とアップしたらPVが6割も減ってしまった!

求人票を最後に見直したのは、いつのことでしょうか。もしそれが半年以上前のことであれば、あなたの会社は今この瞬間も、気づかないまま応募者を遠ざけているかもしれません。

株式会社カケハシスカイ(東京都新宿区)が20代の転職希望者を対象に実施した調査によれば、求人票に「風通しの良い職場」と書かれた文言を見た時点で、6割近くが応募をやめていました。担当者は誠実に自社の魅力を伝えたつもりであっても、読み手には正反対の印象を与えていたのです。「本当に風通しが良いなら、わざわざそう書かないはずだ」「都合の悪い数字を隠しているのではないか」。そう感じた若い世代は、静かに画面を閉じます。

なぜそんなことが起きるのでしょうか。「風通しの良い職場」「成長できる環境」「アットホームな雰囲気」。これらの言葉は、企業が自社を良く見せたい気持ちから自然に出てくる表現です。ところが20代が求人票を見るとき、実際に確認したいのは感覚的な言葉ではなく、「月に何時間残業があるのか」「年間で何日休めるのか」「有給はどれくらい取れるのか」という具体的な数字です。数字のない求人票には、どれほど良いことが書かれていても「証拠がない」と映ってしまいます。抽象的な褒め言葉と確かな数字との間には、応募者が感じる信頼度に大きな差があるのです。

逆に言えば、ここに大きなチャンスがあります。「残業は月平均12時間」「年間休日125日」「有給取得率78%」と正直に書くだけで、ほかの多くの会社が抽象的な言葉に頼っている現状において、貴社は一気に差別化できます。飾らない数字は、誠実さの証明になります。応募者は「この会社はウソをついていない」と安心して応募していただけます。

実際に数字を前面に出した会社では何が起きているのか。厚生労働省(令和5年度)が発行した「地域で活躍する中小企業の人材不足に悩む経営者へのヒント 成功事例集」には、求人票の書き方を変えただけで採用が大逆転の大成功を収めた企業の実例が複数掲載されています。

北海道札幌市でプリンター・複合機の導入サービスを手がける株式会社セラビは、社長と経営企画室長が毎回求人票の文案を細部まで二人で議論し、「17時30分には終業」「年間休日124日」という具体的な数字を求人票に明記するようにしました。良い面だけでなく、「短時間で集中して業務を遂行する厳しさ」も正直に書いています。その結果、募集のたびに「想定を上回る応募数」が集まるようになりました。面接に訪れた応募者から「数字を正直に出している会社は信頼できる」と伝えられることも増えています。

愛知県蒲郡市のホテル末広は、週3日の休館日制度を導入して年間休日150日以上を確保し、それを求人票にはっきりと打ち出しました。2023年には5名の募集枠に対して想定を上回る応募が集まり、若手従業員の定着率も向上。現在、若手が全従業員の約7割を占めるまでになっています。休日数という数字が、応募者の背中を押したのです。

新潟県新潟市のIT企業、株式会社シアンスは、時間外労働を月平均9.5時間にまで削減し、その数字を採用情報に明示することで、毎年複数名の採用を安定的に継続しています。「月9.5時間」という具体的な数字は、「成長できる環境」という抽象表現とは比べものにならないほどの説得力を持ちます。(出典:厚生労働省「地域で活躍する中小企業の人材不足に悩む経営者へのヒント 成功事例集」令和5年度、株式会社三菱総合研究所制作)

これらの会社に共通するのは、特別な予算を使っていないという点です。求人媒体を増やしたわけでも、給与水準を上げたわけでもありません。求人票に書く言葉を、感覚的な形容詞から社内にある実際の数字へ置き換えただけです。しかもその数字は、すでに自社の中に存在しています。

今のまま抽象的な言葉を使い続けると何が起きるか。直接的には応募数が伸びないまま求人費用だけがかかり続けます。それだけではありません。数字を正直に開示した競合他社に応募者が流れていく状況は、今後さらに加速します。若い世代ほど情報収集に慣れており、比較することへの抵抗がありません。「風通しが良い」と書いてある会社より、「残業月12時間・年休125日」と書いてある会社を選ぶのは、論理的な行動です。また、仮に抽象的な表現で入社した人がいても、実際の職場環境と求人票に書かれたイメージのあいだにずれがあれば、入社後の早期離職につながります。採用コストは二重に係ります。反対に、数字を正直に書いて入社した人は、自分が納得して選んだ職場で働いているため、定着率が自然と上がります。

では、今日から何をすれば良いのか。改めて自社の求人票を確認しましょう。そこで「風通しの良い職場」「成長できる環境」「アットホームな雰囲気」「やりがいのある仕事」といった感覚的な形容詞に印をつけてください。次にその言葉に相当する社内の実数を探します。「風通しが良い」なら離職率または在籍年数の平均、「成長できる」なら研修日数や資格取得支援の内容と実績、「残業が少ない」なら月平均残業時間を時間単位で出してください。それを求人票の該当箇所に置き換えます。

数字を出すことを「弱みが見えるのでは」と心配される方がいます。月の平均残業時間が20時間あったとしても、それを正直に書いた方が、実態を知らずに入社して2か月で退職する人を採用するより、会社にとっても応募者にとっても誠実な結果をもたらします。残業20時間でも「それは問題ない」と感じる人もいます。筆者は残業月400時間を経験しています。だから尚更問題ない。「思っていた職場と違う」という理由で辞める人の多くは、そもそも求人票の段階で正確な情報を得られていませんでした。これがいけない。

採用に費用をかけることに限界を感じている会社にとって、求人票への文言を正直に書くことは、最もコストがかからず即効性の高い手段のひとつです。今のうちに感覚的な形容詞を社内の実数に置き換えてみてください。その変換が、貴社の採用を変える大きなきっかけになります。

 


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